『このコラムは、年6回パートナー企業様向けに発行しているリーフレット、「LANDMASTER NEWS」に掲載されたものです。』
皆さんご存知の通り、インド発のスタートアップで、すでに世界でも3本の指に入ると言われるホテルフランチャイズチェーンであるOYOが今年の春、OYO LIFEとして日本の賃貸マーケットに参入しました。
そもそもは、ホテルのフランチャイズシステムをITとAIの力で洗練させ、恐ろしいスピードで世界展開した会社ですが、日本に於いては、ホテルマーケットだけでなく、賃貸マーケットに於いてもそれを洗練させ、収益を上げられる余地を感じたようです。
彼らの素晴らしいところは、まず巨大な資本力です。本国のOYO Hotels & Homesは、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)などから1000億円以上を調達しています。
次に、その資金力とソフトバンク等の信用力を利用した採用力です。勝瀬博則CEOが、日本賃貸住宅管理協会定例会で話した内容によると、2019年8月の時点で、すでに562人のスタッフを採用しています。それも、コンサルティングファームや大手ゼネコンなど、大規模な事業会社で経験を積んだ人材が集まっているのです。当社に来社したOYO LIFEの仕入れ担当者も大手財閥系の不動産会社の元社員でした。我々の業界でそのような人材を数百人規模でしかも数ヶ月という短期間で採用可能な企業が存在するでしょうか?
日本の賃貸マーケットに、これほどまでの規模とスピード感で参入してくる組織を見るのは初めての体験です。しかし、私はここで若干の疑問を感じています。彼らの言う、『旅するように暮らす』ことを望む人は一体どのくらいのマーケットを形成するのか?
現在は撤退いたしましたが、当社は、リーマンショック(2008年9月)の時点で約800室のマンスリーマンションを運営しておりました。細部は違えど、OYO LIFEの運営システムはほとんど日本のマンスリーマンションと形態は、変わらないと感じます。そのマンスリーマンションの運営時の記憶としては、イニシャルコストが安く、家具家電が付き、契約が簡単とはいえ、法人需要以外の純粋な個人利用はほとんどありませんでした。つまり、『旅するように暮らす』ことを望む人はあまり日本に存在していなかったようです。このかなり小さく思えるマーケットをOYO LIFEは、テクノロジーの力で大きく拡大創造して行くということなのです。
また当時から中短期滞在の法人需要はやはり、L社がかなりのシェアを抑えていました。事業が全国展開、家具家電付きで社員が部屋を移動しやすく、価格がリーズナブルという点が彼らの強みです。OYO LIFEが価格競争覚悟でこういった法人需要を取りに行くとなると単なる日本のマンスリーマンション業者となんら変わらなくなってしまい、既存の小さなマーケットシェアの奪い合いになります。
できれば、志を変えず、日本の不動産賃貸マーケットを大きく変えるような、刺激的な事業展開をしていってほしいと希望しています。